日本の保育の歴史 ─子ども観と保育の歴史150年─

著者
汐見稔幸・松本園子・高田文子・矢治夕起・森川敬子 著
版型・頁
A5判上製 395頁(2017/12/24)
ISBN
978-4-89347-255-7
価格
2,860 円(税込) (税別2,600円)
数 量

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概要

日本の保育の歴史150年を描きだす。幼稚園・保育所の歴史をともに扱い、新資料の発掘などもおこなった意欲作! これからの保育を考える視座として、また教育史、社会事業史のテキストとしても役立つ一冊。

本書の企画にあたってモデルとしたのは、1962年に刊行された一番ケ瀬康子、泉順、小川信子、宍戸健夫共著『日本の保育』です。同書の冒頭「この本について」で「いままで、保育の歴史が、社会事業史と、幼児教育史とに分裂して学ばれ研究されてきたことへの反省をおこない、まず、その両者の社会的な背景を基盤とした有機的な結合を、こころざした」と述べられており、この視点に共感しました。また、適切な資料が随所に配置されていることにも感心しました。当時、全員30代であった4人の共著者が、新しい保育をめざして情熱をもってとりくんだことがうかがえる本です。
ただ、50年以上前に刊行された本であり、その後の研究によって補足・修正されなければならぬことも多々あります。また、扱っている時期は、当然ながら1960年代初頭までです。今日までの50年を加えた、この本の現代版をつくりたい、というのが私たちの思いでした。執筆過程で原稿を読みあい、編集会議で検討しました。それによって補足修正した部分も少なからずありますが、最終的な責任は執筆者にあります。
本書には、19世紀後半から21世紀初頭まで150年の日本の保育の歴史を描きました。第7章では日本経済が低迷の時代に入った1991年以降、今日までの保育をめぐる状況を述べました。学校教育法の幼稚園と児童福祉法の保育所という戦後保育体制の転換が目論まれ、一応の帰結として「子ども・子育て支援新制度」が2012年に成立し、2015年より施行されました。
日本の保育150年の歴史をみてきたなかで、今一度、歴史から学び、これからの社会にふさわしい、よりよい保育のシステムをつくらなければならないと切に思います。本書が、これからの保育を考える資料として活用されることを期待するものです。
本書は『日本の保育』をはじめ、多くの先輩の先行研究から学びつつ、これらの誤りや不十分性も指摘しました。本書もまた、読者からのさまざまな批判を受けるかもしれません。それを通じて、本書が保育の歴史研究伸展に何らかの貢献ができれば幸いです。
(本書「おわりに」を要約)

※ホームページ公開の「明治大正期保育所的保育施設設置状況」、また「人口動態」「保育施設数の推移」順次公開してまいります。

主要目次

序にかえて ─用語の定義と本書の概要

第1章 子ども観 ─保育の根底にあるもの
  第1節 子ども観がなぜ問題になるのか
  第2節 近代ヨーロッパにおける子ども観をめぐる議論
  第3節 日本における子ども観の変遷 ─子宝思想は普遍的か
  第4節 守られる存在から権利を主張する存在へ ─子どもの権利条約
第2章 保育のさきがけ
  第1節 ヨーロッパにおける保育施設の誕生
  第2節 佐藤信淵の保育施設構想
第3章 近代国家の成立と保育施設のはじまり
  第1節 幼稚園の誕生
  第2節 保育所的保育施設
第4章 保育の定着と普及
  第1節 幼稚園の普及と批判
  第2節 社会事業の成立と保育所的保育施設の増加
  第3節 幼稚園令と一元化問題
第5章 15年戦争と保育
  第1節 戦争と保育
  第2節 戦時末期の保育施設
  第3節 保育運動の誕生
第6章 戦後保育制度の確立と展開
  第1節 戦後復興と保育 ─1945年~1950年代前半
  第2節 高度経済成長期 ─1950年代後半~1970年代前半
  第3節 安定成長期における保育の停滞 ─1970年代後半~1990年
  第4節 戦後保育の転換点 ─1989年「幼稚園教育要領」改訂
第7章 戦後保育体制転換の胎動 ─失われた20年のもとで「子ども・子育て支援新制度」へ
  第1節 少子化対策としての保育制度
  第2節 社会福祉基礎構造改革
  第3節 「官から民へ」「国から地方へ」規制改革・社会保障制度改革
  第4節 幼保一元化
  第5節 働く女性の増加、「孤育て」と虐待

おわりに
巻末資料
著者紹介